佐々木美術店





〈 注) このBlog著者は佐々木美術店use店主・佐々木秀典です〉








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2014年3月21日金曜日

その憂鬱な顔色の天使は 真っ直ぐSの前に歩いて来た

まだ 有線放送の音は流れていない

H子・「ゴメンね」

Sは今まで3時間待っていた事を
その眩しいH子の羽織るマットな上質のシルクを目にし
一瞬で忘れていた
いや 忘れたのではない
挙動っていたのだ

そういえば その時Sは
口の脇に細かいメレンゲのような泡が付いていた



S・「んー  で H子大丈夫?」

Sは 何故かどさくさに紛れてH子の名前を呼び捨てしていた

やっと 店員とお客さん達の話が再開し
先程 突然故障した有線放送もなおり
やっとカントリー音楽が流れ出した

S・「とりあえず出よう」

いつもと違ってSはH子をリードし
そしてまた名前は呼び捨てをしていた
H子が具合の悪い事をいい事に
調子に乗っていたのかもしれない

仲見世通りの脇道を二人で歩きながら

S・「H子今日大丈夫? 何か食べれる?」

H子・「優しいモノ食べたい   何も食べてないの」

S・「そうなんだ  じゃー どうしようか?」

二人はしばらく とりあえずH子が何か食べれる店を探しながら歩いた

そして 蕎麦屋に入った
まずは たわいもない会話をしながら
Sは 鴨南せいろ
H子は かけそば

かけそば⁈
なんて素朴で美しいモノを食べるんだろう

遅刻したお詫びに
H子が支払いをしたいと言うので
素直に支払ってもらった

美しいそばを食し
寒くて でもキレイで遠い空を見ながら歩いたH子は
少しさっきよりも回復していた
もともと普段から元気なイメージは全くないH子だが

しばらく歩いていると 
H子には全く関係性が結びつかない浅草花やしきが見えてきた


Sは冗談半分で言った
まだ勝手な名前の呼び捨ては続けたままで…

「H子? 花やしき行かない?」




(花やしきは 江戸時代末期嘉永6年(1853年)に花園 植物園として誕生し 途中から遊園地になるが いまだにレトロ感たっぷりである)



〜つづく〜


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