佐々木美術店





〈 注) このBlog著者は佐々木美術店use店主・佐々木秀典です〉








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2010年12月29日水曜日

小説

ブログ読者の友人からのリクエストもあり 一つ 何年か前に書いた短編小説を
今日はご紹介しましょう


・天狗(マスク)・


憂鬱の入口と出口の事を考えてて 時間が関係しているところまで答えが出たところで
イチロウの携帯が鳴った
イチロウは少しの間ベルギー辺りに住む為の貯金をする為 バイトを探していた
携帯はバイト先からだった
面接の日取りの電話だ イチロウは学生時代寿司屋でバイトをしてたこともあり
居酒屋でも出来ると思い 居酒屋チェーン店「エンジョイ!天狗」の面接を決断した
クリニックの先生には「頑張らない程度にね」と言われた
関係ないが看護婦長には「血圧を測ってくださいねー」と 言われた
うれしかった   看護婦長(白衣の天使)に会うのは
例えば不安時に薬を飲むより はるかに効果が高い
薄いブルーの白衣を着てる看護婦長は天使なのだ
イチロウは面接に行った

渋谷の道玄坂の上の方
まず 面接場所がバックルームで 店長と面接
淡々と話が進み 最後にうちの店のシステマティックなんだが
特殊なシリコンでつくったマスクとメガネをする と云うことなのだ
イチロウは早速本社に行き 型を取った
マスクはすぐに出来上がり 来週からこのマスクとメガネを持ってきて
バイトがスタートだそうだ
とりあえず トイレでマスクとメガネを装着
薄く笑っている表情のマスク
「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」や「ご注文をどうぞ」が似合う表情をしている
そのまま電車に乗ってみた 全然不自然ではない 朗らかな男性そのものだ
転んでも薄笑い顔
暑くても 殴られても
イチロウはシャイネスな為ナンパをしたことがなかった
このマスクでナンパをしてみようと試みる
「へい!彼女!お茶でもしない?」
イチロウはかなりアンティークな死語の言葉しか知らない
全く女の子はひっかからない
イチロウはストーキングをするのが夢だったが
このマスクは夜はあやしい
ニュアンス的にニヤニヤしてる感じになってしまう
とりあえずその日は家に戻った
マスクとメガネを外し 鏡を見ると かなり現実感がなく 曖昧な嫌な気分になった
素の顔が嫌とか そう云った事ではない なんとなくだ
その後もメランコリーな気分は続き 朝まで寝れなかった
その理由は明日マスクを装着し 何をしようか思考してるせいも84%はあった

久しぶりにクリニックの会員制のパーティーに出掛けた
勿論マスクを付けて仲間を驚かせようと思いだ
まだ11時なので人はガラガラで 知り合いも居なかった
イチロウは一人でグーグ・クリコのイエローのフルボトルをアホではあるが頼み
薄い笑い顔で飲んでいた
ボトルが重い為 腕が疲れた 半分空けたところでレイが着た
イチロウがレイを呼んだら
誰?って顔をされ 訳を話しやっとイチロウだとわかってもらった
細長いバカラのシャンパングラスをもらい 乾杯をした
レイは表参道でキャッフェレストランを経営する異常潔癖症と診断を受ける女性だった いつも同じブランドの服を着てる
セックスは開始から30分以内にシャワーを浴びないとダメで
キスする前はイソジンの消毒液でうがいし その後モンダミンをし
手と性器をオキシドールを3~4倍に薄めたので消毒しないと触らせてくれない
病院内でセックスしている気分になる
アルコールは飲むが いくら酔っても絶対消毒はしないと触らせてもらえない
鞄の中はいつも消毒液臭く ビニール手袋やらなんやらいっぱい持ち歩いている
異常だが 素敵で華奢で素朴で美しい女性だ
レイはマスクに興味を持ち 「エンジョイ!天狗」に行って自分もマスクをつくりたいと言う イチロウはイメージした 同じように薄く笑った顔で二人ともニヤニヤしながら消毒液臭いセックスをする事を
最高だと思った  その後も二人はマスクの話で盛り上がり
二本目はブルゴーニュの少し酸っぱさがあるキリッと冷えた白を頼んだ
そんな時だ  パーティーの主催のクリニックの看護婦長
薄いブルーの白衣の天使がやってきた  私服がなんかパッ と しない
イチロウはマスクを付けている
別人として看護婦長とお話しが出来る
つまり患者と看護婦長の関係性なしで話せるのだ
ドキドキ ワクワク ソワソワ興奮し
唇のワキから出る泡を拭き 看護婦長に話し掛けた
パニックロマンティックに襲われ 「エキスキューズ モア?」
いきなりフランス語になってしまった
完全にテンパってはいるが マスクを付けている為表情は薄い笑顔で余裕すらあるかのようだ
看護婦長は「まあ ボンジュー」と イチロウが冗談を言ったのだと勘違えして
冗談で返してくれた
おー危ない危ない 勘違いしてくれて良かった
イチロウは田島だと偽名を使い席に着いた
看護婦長は森口と名乗った 少し話をしてたのだが どうも話が合わない
と云うか 話がつまらないのだ イチロウは憧れの天使 看護婦長とプライベートな話をして つまらなく センチメンタルナースコンプレクションになってしまい
イチロウは酔いが少し醒めたが まだ酔っていた
口説いて身体だけでも 楽しもうと思った
看護婦長はアルコールも弱いらしく すぐに酔ってしまい
参ったが しょうがなく 西新宿のホテルに部屋を取り 水を飲ませ寝かせた
イチロウは一気に酔いが醒めてしまい ゆっくりジャグジーに入り
ルールサービスでワインとパスタを頼み 一人ディナーを楽しもうとしたら
森口看護婦長が起きだした
ベロベロに酔った女性とセックスをしても罪悪感が後から襲って来ることは知っている 自分もベロベロに酔ってれば話は違うが
看護婦長はまた水を飲み シャワーを浴びると言うので 酔いが醒めたらしい
頭が痛いと言うので ロキソニンをルールサービスで処方してもらった
全くどっちが患者なのか 看護婦なのかわからない

やはり簡単に手に入る物には価値が薄い
希望を持ち そのための努力をし そして手に入った時こそ
充実感 満足感 自信をつかむ
看護婦長に価値がないと云う意味では決してない
イチロウと看護婦長とのフィーリングな訳で
看護婦長がシャワーからパンツだけで現れた
イチロウはその美しく眩しい身体のプロポーションを見て フォークを落としてしまった
透き通るような薄く白い肌
華奢な身体 そして本当に素敵なライン
イチロウは夢遊病者のように看護婦長の折れて仕舞いそうな身体を抱きしめて マスクの中で泣いてしまった
わからない 何故かなんてわからない
ホテルのライティングが丁度看護婦長の美しいラインをわかりやすくするかのような
イチロウから見て 丁度逆光なのだ
静かにベットに入り その きめ細かな肌に触れると 看護婦長が震えているのがわかった
と 思ったら いきなり看護婦長はイチロウの性器をくわえ イチロウは思わず6.2秒で…
イチロウは看護婦長を抱きしめ眠りについた
気持ち良い目覚めの朝
すると看護婦長がまた  イチロウの…
イチロウは目が醒めてから22.6秒で…
看護婦長はシャワーを浴び帰って行った
連絡先などお互い聞かずに
イチロウはルールサービスで大量な かすみ草を頼み
メイドに財布の中の現金を全て渡し「クリーニング代だ」と チップを渡し
ベットに横たわり
うとうと自決する夢を何度となく見た


・あとがき・

今 この日本でなんの期待もないのではないか  だからこそ 自分のモチベーションを高めなければならないのではないか  自立や家族(共同体)についても大切なる問題や事情 それらに気付こうとしない
天使の必要性にリアリティーを付ける事で わかってくる事がいくつか出てくるのではないか

2004/7/19  

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